メールマガジン"ローマから吹く風"第26号:イタリアの英雄/元祖ポピュリスト・カエサル


「ここでトロイージはポスティーノを撮影をした」と書いてある(プロチーダ島)
 
目 次
1.はじめに イタリアの英雄達
2.イタリアの英雄1:マッシモ・トロイージ
3.カエサルの逸話:元祖ポピュリスト・カエサル
4.旅の情報:フィレンツェの古式サッカー 、アグリジェント神殿のライトアップ
5.あとがき

1.はじめに イタリアの英雄達

 イタリアで英雄と言ったら誰を思い浮かべるでしょうか。カエサル、ガリバルディ等を思い浮かべる人も多いでしょう。何しろローマッ子はカエサルがローマ市民に遺産を分けてくれたことを今でも感謝しているのです。でもイタリアの街を歩いていると、カエサル、ガリバルディ以外にも数多くの英雄達がいることに気付きます。その多くを我々日本人は知りませんが、地元の人たちは知っています。もちろんナチスに抵抗したといった名もない英雄達もいます。イタリアの人たちはそのような英雄達と常に一緒にいて、郷土の誇りとしています。もしかしたら日本人が忘れてしまったセンチメントなのかも知れません。このようなことからローマから吹く風では折に触れてそのような英雄達を紹介していくことにしました。
 

2.イタリアの英雄1:マッシモ・トロイージ

 1994年制作のイタリア映画「イル・ポスティーノ」で郵便配達夫を演じたナポリ出身の俳優です。この映画はノーベル賞作家でチリの国民的詩人パブロ・ネルーダが1950年代に弾圧を避けてカプリ島に身を寄せたことを題材に、パブロ・ネルーダと郵便配達夫の心の交流を描いた作品です。マッシモ・トロイージは心臓を悪くしていたにもかからわず、この映画にかける意気込みは凄まじく、治療よりも撮影を優先し、撮影が終了してから12時間後に亡くなりました。41歳でした。出来上がった作品は本人が亡くなる直前に予言したように全世界で絶賛され、多くの人たちの心に長く強い印象を与えています。
 
 ナポリの生まれであるマッシモ・トロイージは今でもナポリの大英雄です。ナポリで知らない人はいません。「イル・ポスティーノ」のロケが行われたナポリ湾に浮かぶプロチーダ島は至る所に「ここでトロイージは撮影をした」との立て札があります。マッシモ・トロイージがパブロ・ネルーダを演じたフィリップ・ノワレと写っている海辺の写真には、フィリップ・ノワレの事など書いてありません。そう、マッシモ・トロイージはナポリの英雄だからです。
 
 プロチーダ島は→http://www.ivc-net.co.jp/cult/kaze/262.html

3.カエサルの逸話 元祖ポピュリスト・カエサル

 アメリカではトランプさんが大統領になりました。トランプさんは典型的なポピュリストとも言われています。大衆の支持のもとに既存の体制と対決することをポピュリズムと呼びます。カエサルが属した党派は民衆派と呼ばれ、それが転じてポピュリストと呼ばれるようになっています。
 
 ローマの多くの官職は、ローマ市民の選挙によって選ばれています。カエサルは、ローマ市民の間で、元老院派が権益を享受していることに対して不満があり、粛清された執政官のマリウスの時代を懐かしむ気配があることを嗅ぎ分け、ローマ市民の支持を集めます。この手法は、一般大衆の利益や権利、願望を考慮して、既存の体制と対決します。カエサルは、ローマ市民の支持を背景に、地位の向上を達成しました。
 
 カエサルの凱旋式では、戦った兵士達に報奨金を与えました。その額は、兵士であれば実に年間給料の35年分にもあたる途方もないものでした。さらに当時の常識に反して、戦死者の遺族にも報奨金が与えられました。また、見物に来た市民全員(成人男性)に、一人あたり87.5リットルの小麦と、3.27kgのオリーブ油等のお土産が出されたと言います。凱旋式の招宴には6万人が招待されました。凱旋式の合間には、演劇を提供したり、競技場に水を引き込んで模擬海戦を見せたり、400頭のライオン狩りが行われました。元祖・ポピュリストの面目躍如です。
 
 ちゃきちゃきのローマっ子はいまだにカエサルの遺言でローマ市民全員に遺産わけをしてくれたことを感謝しているということです。そして3月15日(暗殺の日)を忘れないそうです。それだけローマの人々はカエサルに心服しているのですね。カエサルはイタリアの英雄中の英雄なのです。トランプさんもカエサルにならって、財産を提供したらと思うと楽しくなります。

4.旅の情報:フィレンツェの古式サッカー 、アグリジェント神殿のライトアップ

 イタリアの街には、それぞれ守護聖人がいます。フィレンツェの守護聖人は洗礼者ヨハネ。6月24日のこの日は、フィレンツェ市は休日になり、市民は休日を楽しみます。この日にはフィレンツェのサンタ・クローチェ広場では古式サッカーのお祭りが開かれています。現在のサッカーの起源は、このフィレンツェのサッカーにあるといわれており、中世の香りがいっぱいの競技です。今日のサッカーと違うのは、足と頭だけでなく、手も使ってよいこと。選手は16世紀当時の華々しいユニフォームを着て出場します。
  イタリアの休日は→http://www.ivc-net.co.jp/info/data.html#life1
 
 シチリアのアグリジェントには、“神殿の谷”と呼ばれるギリシャ神殿が立ち並ぶ、世界遺産に登録された遺跡地帯があります。紀元前5世紀頃に植民したギリシャ人によって立てられたものです。この神殿は7月から9月まで毎日夜間ライトアップされています。料金はお一人10ユーロ。シチリアを尋ねられる方は、是非お立ち寄りください。

5.あとがき

 ヨーロッパの株価をみているとイタリアの株価が上昇傾向にあることを気付きます。イタリアの現地にいると、景気は良くなく、庶民の生活は一向に良くなる気配がありません。でもイタリア経済に復活の気配があると言うことなのでしょう。イタリアは職人の国ともいえます。現在のIT技術を活用しながら、世界的なファッションブランドになったブルネロ・クチネッリの例は、職人の国イタリアならではの成功例のように思えます。元気なイタリアの一側面として、ウンブリアの山のなかにあるブルネロ・クチネッリを紹介します。
 
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